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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第112回ミコアイサ
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第112回 2011/03/01
ミコアイサ

mikoaisa

110)ミコアイサ 「カモ目カモ科アイサ属」

    英 名:Smew
    学 名:Mergus albellus
    漢字名:神子秋沙、巫女秋沙

    大きさ:オス44cm, メス39 cm

オスは、一言で言うと全身が白く眼の周りが丸く縁取ったように黒いため、俗称でパンダガモとも呼ばれる、実に目立つカモです。白装束を身にまとった、神前に仕える巫女に見立ててこの名前が付いたようです。

私は、既に30年以上前にさいたま市(旧浦和市)で鳥見の深みにはまっていったのですが、野鳥図鑑でこのミコアイサの凛と見える姿に一種の憧れを感じていました。最初に見たのは近くの彩湖(以前は道満湖と呼んでいました)でした。ところが、そのカモがミコアイサとは思わなかったのです。下の写真をご覧ください。ミコアイサ、メスを見たのが最初の出会いだったのです。mikoaisa

ミコアイサは雌雄ともに真白だと思っていたものですから、頭部全体が濃い褐色で、喉と頬の部分だけに白が入り、翼と上部は灰色味の強いこの個体がミコアイサのメスだとは思いもしなかったのです。当時私が見ていた野鳥図鑑にはミコアイサのオスしか記載がなかったのです。今となっては笑い話です。

オスの白さからミコアイサと付けられましたが、異名にイタチアイサやキツネアイサというのがあります。これらはこのメスの褐色の頭部を見て付けられたもののようです。古来からオスとメスの色合いの違いが大きいため、同じ種類とは思わなかったのは、私だけではなかったようです。

このミコイアイサは国内に飛来するアイサ類の中では最も小さい種類です。アイサは、奈良時代には、秋早く現れるカモ=秋早鴨=「あきさ」と呼ばれていたものの転化といわれ、江戸時代になってウミアイサ、カワアイサ、そしてこのミコアイサと区別されたようです。

アイサ類は、全て嘴が細く、その先端は鉤形に曲がり、縁には鋸歯(きょし)と呼ばれるのこぎりの歯のようなギザギザが口元の方に向いてあります。これはいったん捕えた獲物をしっかりと押さえつける機能があると理解されています。

繁殖地は、ユーラシ大陸北部のタイガ地帯といわれ、ヨーロッパ各国、中国、朝鮮半島から日本で越冬します。北海道では繁殖が観察されていますが、どうも例外的なようで、おそらく国内で冬場見かけるミコアイサはほぼユーラシア大陸北部からの飛来と考えてよさそうです。

真白いミコアイサを最初に見たのは、渡良瀬遊水地の谷中湖です。何と100羽以上のオスが所狭しとばかりに寒空の下、元気に潜水を繰り返していました。その後も、ミコアイサを見かけるのは広い湖沼が多く、そのような場合ミコアイサはヒトを警戒してでしょうか岸から一番離れた場所に陣取るようです。警戒心が強く、かなり敏捷な動きをするカモという印象だったのですが、或る時、皇居のお堀に数羽のミコアイサが、ほとんどヒトを警戒することなくキンクロハジロやユリカモメ、コブハクチョウと泳ぎ回っているのを見て、少なからずびっくりしたことがあります。皇居のお堀には、おそらく今年もミコアイサが来ているのではないでしょうか。

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ところで、上の写真の左側の個体、これは何でしょうか。今のところどの図鑑でも見かけたことがありません。右側のミコアイサ♂との対比から、まず間違いなくこの個体はミコアイサ♂の換羽期=エクリプス、それも後期に入った状態だと思われます。

さてミコアイサ♂の頭部には冠羽がありますが、その下の斑は通常黒いと記述されることが多いのです。しかしタイトル写真と、この上の写真をよくご覧下さい。この部分はより正確には金属光沢を帯びた緑色なのです。下の写真でよくお分かり頂けるでしょう。

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ミコイアサは冬の季語です。

ひかり合う忍野の沼や群秋沙  戸田 明子

上で歌われている秋沙(アイサ)は群れとなって沼にいるのですから、まずこのミコイアサを歌ったものと考えてよさそうです。

以前は、かなり山奥の静かな湖沼でしか観察できないと思われていたミコイアサですが、東京では皇居のお堀でも見ることができるくらいです。ヒトの生活圏の中でも越冬できるように生活のリズムを変化させつつあるのかもしれません。

 

(注)写真は、画面上をクリックすると拡大できます。

 

 



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