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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第136回キンクロハジロ

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第136回 2013/3/01
キンクロハジロ
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キンクロハジロ

135)キンクロハジロ 「カモ目カモ科ハジロ属」

    英 名:Tufted duck
    学 名:Aythya fuligula
    漢字名:金黒羽白
    大きさ:40 cm

この時期まだ国内には多数が越冬しているカモの一種類、キンクロハジロをご紹介しましょう。名前の由来から始めます。キンは、金色で、このカモの光彩が黄色いことから採られています。クロとは黒で、上面の羽が黒いことから。また翼を開いた時に白い翼帯が入ることから羽白=ハジロで、このカモの名前は全て色から来ています。

一番下の写真をご覧ください。東京都葛飾区水元公園で撮影した羽ばたきをしているオスです。翼先端部(初列風切羽)とその連続した下部(次列風切羽)に、翼の外縁に沿って白い翼帯がはっきりと入っています。この白帯をもつカモの仲間はハジロ属と呼ばれ本種のほかにホシハジロ、スズガモなどがいます。この属は、またスズガモ属とも別称されています。英名にあるTuftedとは、房を付けたと直訳されますが、このカモのオスの冠羽の状態を指していることは間違いないでしょう。下の三枚の写真でご確認ください。タイトルは、皇居の馬場先堀で撮影したものです。皇居のお堀で越冬するカモの中では、このキンクロハジロが一番多く観察され、都心にもかかわらず、ミコアイサも飛来します(残念ながら今シーズンの飛来はまだないようですが)。

キンクロハジロの世界的な分布は大変に広く、ユーラシア大陸、アフリカ大陸、北アメリカ大陸そしてマダガスカルやニュージーランでも生息しているといわれています。私は、ドイツハンブルグ北部では、よく見かけましたが、アメリカ、ロスアンゼルス郊外の汽水系の湿地帯の池で見かけた時には吃驚したものです。

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上三枚の写真では、オスの頭部の色彩の変化を比較することができます。一番左は、東京・上野不忍池で撮影した個体で、頭部は真っ黒に見えます。中央は、コハクチョウの飛来で有名な埼玉県深谷市川本地区(荒川)のもので、頭部に紫色が入っています。一番右は、千葉県市川市じゅん菜池でのもので、金属光沢とも思えるほどの艶のある紫色をしています。写真をクリックしますと拡大できますので、拡大写真で比較してください。これからは、羽根の色自体に色があるわけではなく、構造色と呼ばれる、光の屈折によって色を表す構造をしていることが分かります。

下はキンクロハジロ・メスですが、全身、濃淡の差はあれ、褐色をしています。また下左の写真(北海道苫小牧市・北大演習林内の池)でお分かりのように、メスにも短いものの房状の冠羽があることが分かります。下右の写真は、横浜市菊池池で2010年に撮影したものですが、大変珍しいものです。親子のカモは珍しいことではありませんが、国内で繁殖するカモは、カルガモだけで、それ以外の野生のカモはユーラシア大陸北部で繁殖するのです。おそらくこのキンクロハジロ・メスは、飛翔能力に問題があり(羽を痛めたか)、本来の繁殖地に戻ることができなかったのでしょう。オスがそれに従って残り、国内で子育てしたものだと思われます。その翌年以降、この地での繁殖は確認できていません。2011年の春先には、大きくなった子ガモと一緒に本来の繁殖地に戻ったと思いたいところです。また雛鳥の光彩は親鳥の金色(黄色)の光彩と異なり、褐色であることも、その時初めて分かったことです。

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キンクロハジロは、雌雄ともによく潜水して餌を採ります。潜水型カモなのです。ハジロ属のカモは、全て潜水型であるともいえます。下の写真の右2枚は、ちょっとジャンプして潜水するオス(藤岡市西平井地区にて撮影)です。食性は、雑食ですが専ら動物性の餌を好むようです。このキンクロハジロは、港湾内部などの海水系でも、また河口などの汽水系、そして内陸の河川や湖沼などの淡水系の全てで越冬している姿が観察されます。それぞれの場所で主として採る餌は異なるようですが、海水系、汽水系では二枚貝や巻貝などを主食とするようです。淡水系では、淡水系のエビや水生昆虫を採るといわれています。ただこのカモは全て水中で餌をのみこんでしまうために、観察だけでは餌を特定することができません。研究者が解剖した結果、こういうことが分かったのです。このカモの消化器官での餌の消化能力は大変なものがあることは間違いありません。水面で貝やエビの殻を吐き出した場面は観察されていませんので、すべて消化していると思われているのです。

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オスに見られるような黒と白のコントラストは、海水系カモのスズガモも同じです。冠羽のあるなしで、双方の区別は容易に付きます。スズガモには冠羽はなく、後頭部は丸いのです。また、キンクロハジロの背中は黒く、他方スズガモの背中はくすんだ灰色をしています。 嘴は広く鉛色をしていますが、先端の嘴爪周辺は黒く、オスでは黒い斑が先端に向けて広がっています。上左の写真(東京・上野不忍池にて撮影)で確認できます。この点は、スズガモ・オスも同様ですが、コスズガモはこの黒い斑が先端部と同じ狭い幅となって長方形に見える点が識別のポイントとされています。

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比較的観察の容易なカモです。湾岸部でも、近くの都市型公園の池や沼ででも観察ができる可能性が大きいのです。白と黒のコントラストが綺麗で、房状の冠羽が後頭部にあるキンクロハジロを探してみてください。今月いっぱいで、繁殖地に戻るのではないでしょうか。

 

 

(注)写真は、画像上をクリックすると拡大できます。

 



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