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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第56回アマサギ


第56回 2006/07/01
アマサギ


(54)アマサギ「コウノトリ目サギ科」amasagi300
    英名:Cattle Egret
    学名:Bubulcus ibis
    漢字表記:尼鷺、甘鷺、亜麻鷺
    異名:猩々鷺
    大きさ:50cm

 

 

 

田植え前の、田園の風物画に似合う、夏鳥、アマサギです。このことから、「ナハ(わ)シロサギ」とも呼ばれたようです。下左の写真は、水を引いたばかりの田でまだ苗代の準備もできていない状態に降り立ったアマサギです(2006年5月)

アマサギ
amasagi3-300

旅鳥ですから、夏場以外は日本より南方に飛び去るものと説明されていますが、残念ながらその渡りのルートは、私が調べた限りでは判明しておりません。何らかの資料をお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひお教えください。

生息域は、ダイサギと同様で、なんと全世界に及びます。東南アジア、アフリカ、南北アメリカ、豪州と、東西半球、南北半球の全域に及びます。ただダイサギの方が、北方方向に向けては生息域がより広いようです。またアマサギの生息域は北方に向けて拡大しているとの情報がありますので、数十年後にはどうなっているのでしょうか。興味のあるところです。

日本のシラサギの仲間では、最も小型です。しかしコサギよりわずかに小さいだけですので、遠くから見ますと、必ずしも大きさだけでは識別は困難です。しかし、春から夏にかけての特徴は、鮮やかな橙色をした頭部から胸にかけての色彩です。他の、いわゆる「シラサギ」(コサギ、ダイサギ、チュウサギ)がすべて頭部、胸部ともに白いので、混成集団をとっていてもすぐに見分けられます。また背中の部分にも、よく見るとこの橙色が入ります。

この鮮やかな橙色を見て、アカ(赤)サギ、ショウジョウ(猩々)サギ、ヒ(緋)サギ、ベニ(紅)サギの異名がつけられたようです。現在のアマサギは、やはり色彩からつけられたようで、飴色が転じたものと思われます。亜麻色という呼び方は明治以降のものですので、これが名称の起源とは思われません。また漢字表記の、尼鷺、甘鷺はともに「アマサギ」と学名が定まった後の、当て字ではないかと思われます。

ただ、冬羽では、他の「シラサギ」同様、全身が白く変わります。この時には、嘴の太さ(より太い)、短さ(より短い)、また首の太さ(より太い)と短さ(より短い)がコサギとのよい見分けポイントとなります。より簡単には、脚の先が黒っぽいアマサギに対して、黄色いコサギという見分けもできます。

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水の張った田圃だけではなく、乾いた畑にも舞い降り、魚類、甲殻類、昆虫を捕食します。シラサギの仲間の中では、最も乾燥地を好むともいわれています。写真撮影しようとされた方はよく判ると思いますが、人家の近くの田畑に降りたつわりにヒトに対する警戒心は強く、なかなかよいショットを提供してくれません。ただ不思議なことに、畑を工作するトラクターには平気で近寄り、耕作したばかりの地表面に見つかる虫やその幼虫をついばむ姿がよく目撃されます。

田圃の農作業に牛馬などの家畜が使用されることは、戦後のわが国ではほとんどなくなったようですが、東南アジアの農業国では今でも水牛などが活躍しています。おそらく水牛についた寄生虫を捕るか、若しくはそれ以上に、水牛が攪拌する田の水の中に現れる魚類や水生昆虫や雑草の中から驚き飛び出す蛙や昆虫を捕獲するためでしょうか、この水牛の背に舞い降り悠然としているアマサギを、中国華南地方と台湾の南部で見かけたことがあります。英名のCattle Egret、ウシサギという呼称は、こうした牛の背に止まっているこのサギの様子に因っているに違いないでしょう。わが国でも、アマサギをウシサギと呼んだ資料がありますので、ヒトの考えにあまり差はないようです。

季語では春とされていますが、アマサギを歌った俳句にはお目にかかれていません。

古く、「古今著聞集」にこう歌われています。

 
いづみなるしのだの杜のあまさぎはもとのふるえに立ちかへるべし


田畑の緑の中でくっきりと際立つ橙色の鷺、アマサギを探してみてください。きれいな絵になっていますよ。下は、冬羽と夏羽の個体が一緒にいる場面です。

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注:写真は、画像上をクリックすると拡大します。