White
White CEC LOGO HOME 製品 テクノロジー サービス 会社概要 コラム メール English White
White
タイトル

ホーム/コラム/徒然野鳥記/第69回ノビタキ

第69回 2007/8/01
ノビタキ

ノビタキ
白樺とノビタキ
(67) ノビタキ 「スズメ目ツグミ科ノビタキ属」     英名:(Common) Stonechat
    学名:Saxicola torguata
    漢字名:野鶲
    大きさ:13 cm

ノビタキ:本州中部以北の高原に行きますと、すぐ目の前に現れてくれる、すがすがしい高原の夏を感じさせる最も代表的な野鳥です。スズメよりも小さく、メジロよりも大きいのですが、ノビタキが住む環境にはスズメもメジロも現れることがほとんどありませんので、実際の大きさ(13cm)よりも大きく見えます。オスは、頭全体が真っ黒く、喉の部分にはっきりとした橙色がありますので、なかなか存在感があり、他の野鳥と見間違えることはまずないでしょう。

本州中部以北では高原に、北海道では草原に、夏の時期、繁殖します。世界的な繁殖分布では、日本列島北部以外には、広くユーラシア中部、南部、アフリカ東部、南部に及びます。越冬は、アフリカ北東部、アラビア、インドから東南アジア、中国南部といわれています。国内では、秋口、越冬地に向かうノビタキを市街地で見掛けることもあります。私自身は、千葉マリンスタジアム近くのブッシュで、枯れた草の一番上にとまり、幾度となく昆虫を捕捉しては元の場所に戻る、全身明るい褐色に変身した冬服のノビタキを9月下旬見掛けています。これから遠く東南アジア方面に飛んでいく準備中だったのでしょう。同じように秋に南へ飛んでいくツバメは、長距離飛翔の準備地点で大きな群れを作るのですが、ノビタキはどうも小さい群れでの飛行を好むようです。

林を好むキビタキと異なり、その名の通り草原などの平野部に営巣、まさに「野」を繁殖地とします。正式なデーターはありませんが、経験上、本州では標高1200~1300メートル以上に生息するようです。関東地方では、標高1100メートルの榛名高原では見掛けたことがありませんが、1400メートルの奥日光戦場ヶ原、1700メートルの霧ケ峰高原では、6月下旬から夏の期間、観察するのは容易です。といいますのも、なぜか余りヒトを恐れず、むしろ登山者などの周囲を飛び回るほどで、生息してさえいれば必ず観察可能だからです。

  ノビタキが迎えてくれる霧ケ峰  虚心   という句もあるくらいです。

オスは、頭部が全体として黒く、腹部は白、そして胸の部分は橙色ときわめてシンプルで、かつ目立つ色彩バランスを持っています。羽には二つの白斑があります。一つは、肩の部分のちょっと下、専門用語で大雨覆に長く白斑が入り、ずっと羽の下の方、三列風切に小さく白斑があります。この大雨覆の白斑の完成度がオスの成熟度を示すバロメーターです。下の写真の左側は、肩下に長く白い斑が立派に伸びていますが、右の個体はそれに比べるとまだまだこれからといった白斑の状態です。これから青年期に向かう若いオスといえるでしょうか。また喉の橙色の斑の色合いと大きさにはかなりの個体差があるといわれています。

ノビタキ
ノビタキ
オトナのノビタキ♂
若いノビタキ♂

さてノビタキ・メスです。オスと大きく違うのは、頭部が黒くなく、頭頂部には黒褐色の縦斑が入ります。また喉は白く、白い胸の橙色はオスよりもはるかに淡く、またぼんやりと拡散しています。大雨覆と三列風切に白斑があるのはオスとおなじです。下の写真のメスは育雛中です。普通昆虫を餌とする野鳥は、捕捉次第、餌を飲み込んでしまいますが、育雛期間中だけこうして餌をくわえて巣に戻ります。もし餌を咥えて飛び回ったり、木の枝にとまったりする野鳥を見掛けることがありましたら、雛を育てているのだと考えて間違いないでしょう。

ノビタキ
ノビタキ♀

下の写真は、やっと独り立ちしたばかりの若鳥です。未だ尾が伸びきっていません。腹部の橙色も全体に及び、この段階では雌雄の別はつきません。背中の羽も部分的に雛の時の幼羽が完全に抜け切っていません。一見別の種類の鳥かと見間違えるほどですが、親と同じ生息地にとどまりますし、同じ地鳴きの声、「ジャツ、ジャツ」もしくは「ヒーヒー」を聞きますと、バーダーから見ますと「残念ノビタキの若鳥であったか」ということになります。

ノビタキ
ノビタキ
ノビタキ(若鳥)
ノビタキ(若鳥)

ノビタキは、夏の季語。

 

野鶲のすこし仰向く風情かな  飯田蛇笏

 

の芽野鶲きたりかくれける  水原秋桜子

二句ともに、高原にいるノビタキの生態を見事に歌っています。

他方で、ノビタキ・オスは、高原の中にポツンポツンとまばらに生える低木の高い部分に止まり、実によく囀ります。それを歌った句です。

 

野鶲の水湧くごとく囀れり  山田みずえ

多くの野鳥図鑑でノビタキの声をカタカナ表記していますが、残念ながら私にはどの表記もピンときません。鳴声を録音したサイトを見つけましたので聞いてみてください。カタカナ表記の困難さがお分かりいただけますでしょうか。

http://www.asahi-net.or.jp/~yi2y-wd/a-uta/uta-nobitaki.html

家族連れで夏休み、避暑をかねて標高1300メートル以上の高原にお出かけになるチャンスがあれば、本州中部以北に限られてしまいますが、近くの草薮や、そこから生えている低い潅木の一番上をよく見てください。頭の黒い小さい野鳥がいるかもしれません。ノビタキのオスです。また、オスがいれば必ずその付近にメスもいます。夏休みの高原での観察課題にいかがでしょうか。