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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第84回タヒバリ
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第84回 2008/11/01
タヒバリ

タヒバリ
タヒバリ

(82) タヒバリ 
    「スズメ目セキレイ科タヒバリ属」
    英名: Buff-bellied Pipit
    学名: Anthus rubescens

    漢字名: 田雲雀、田鷚

    大きさ:16cm




タヒバリ:晩秋から初冬にかけて、日本にはシベリアから越冬にやってくる、冬鳥です。アメリカ大陸では、アラスカなどの北極圏で繁殖し、メキシコ湾岸一帯に越冬するといわれています。その名の通り、冬になると麦を植えるために整地された畑などでよく見かけることができる、大きさも色合いも見方によってはヒバリによく似た野鳥です。冬羽では、体上面は、ヒバリより灰色味がかかった褐色をしていますし、下面は、ちょっと濁った白いベースに黒褐色の縦斑が入ります(夏羽では、全身に赤味がさしてきます)。また、ヒバリの背中には、それぞれの羽を縁取る多くの白斑が入りますが、タヒバリは基本的に二本の風切羽の縁取りだけです。実はタヒバリは、セキレイの仲間。長めの尾を上下に振るさまは、セキレイによく似ています。下は、ヒバリの写真です。この時期、ヒバリは冠羽をちょっと持ち上げます。色合いの違いは、タイトル写真と比べていただければすぐお分かりになると思います。

裏高尾山のカヤクグリ
ヒバリ

冬になりますと、本州以南に飛来し、高山を除いて、平野部の様々な場所に降り立ちます。どうも開けた場所を好むようで、河原、農耕地、海岸、草地といったところで見かけることができます。こうしたところから、異名として、畦(あぜ)雲雀、溝(みぞ)雲雀、土(つち)雲雀、川(かわ)雲雀などと呼ばれてきたようです。また、古名、犬(いぬ)雲雀は、ヒバリに似ているがヒバリではないという意味で付けられたものでしょう(動物にかぎらず、イヌのつく生物は、本物でないという意味で付けられることが多いようです)。タイトルの写真は、河原(荒川)で餌を探すタヒバリです。また、下は、海辺(東京湾)で餌を探すタヒバリです。

海辺のタヒバリ
海辺のタヒバリ

私の野鳥観察地、見沼田圃(埼玉県さいたま市)にも冬場になるとよく現れ、数羽から数十羽の大きな群れを作って地面に降り立っていることもあります。地味な褐色の鳥ですので、土の色と同化して見つけるのが容易ではありませんが、それがまた楽しみでした。残念ながら、近年飛来数が減ってきているように見受けられます。芝川調整池工事が進行中のせいだとよいのですが。雌雄同色です。

タヒバリによく似ているのが、ビンズイです。ビンズイは夏高山帯で繁殖し、冬場に里山に降りてきますが、タヒバリは冬の鳥で、同じ頃に平野部に飛来しますので、里山や平野部ではニアミスが大いにありえます。背中の色は、ビンズイの方が緑味がかっていますし、胸の黒っぽい縦斑もはっきりしています。よく指摘されますが、眼の後ろ側にビンズイは、はっきりした白斑があります(タヒバリはない)。更に、ビンズイは枝にとまった状態で見ることも多いのですが、タヒバリはほとんど地面で見ることが多い(私はタヒバリが枝にとまった状態を観察したことがありません)。見分ける上での参考にしてください。下は、ビンズイの地面に降りたところですが、眼の後ろの白斑、胸の濃く黒い斑にご注目ください。

海辺のタヒバリ
ビンズイ

またタヒバリの背中には、二種類の風切羽の縁に白い斑が入りますが、それを、かの「日本野鳥の会」の創設者、中西悟堂氏はこう歌っています(ちなみに、「探鳥」も「野鳥」も氏の造語です)。

   とりわけて模様やさしき二条痕は田ひばりなりき曲線に長く

タヒバリは、秋の季語です。

   畦雲雀 夕波あかりに 見えにけり      中村草田男

   たひばりの 翔けて柴刈り 来りけり     木津柳芽

   田鷚の声ききとめて湖南ゆく         志摩芳次郎

   田鷚をあげて菓子めく彦根城         森  澄雄

これからは、次第に北風が強くなり、木枯らしも吹くでしょう。寒く強い風の中、けなげに田畑で餌を探す褐色の鳥をよく観察してください。ヒバリでしょうか、ビンズイでしょうか、それともこのタヒバリでしょうか。





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