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はじめに

 夢と希望をもって迎えた新しい世紀も、問題山積のままスタートして、早や6年目に入ろうとしている。今から60年前、日本は敗戦による壊滅的状態から、やがて高度成長期を経て、前世紀末は空前のバブル崩壊を体験した。今だその状況から脱却できてはいないが、我々は、ただ物質的充足をのみ追求してきた訳ではないし、それが人類にとって幸福の絶対条件でもあるまいと思う。

 自身チェロをこよなく愛されたロケット博士こと故糸川英夫氏は、そのエッセイ「モーツァルトと量子力学」の中で、氏の敬愛する世界的量子力学者ワイスコフ博士の言葉を引用されて「人間は、いかに、モノとカネを追っても、心の空白は埋められない。・・・空白の心をみたして、満足を与えうるのは、科学と芸術と宗教(モラル)である」と述べておられる。
 科学の問題は別にして、これから再び取り上げようとする音楽も、哲学、宗教、倫理や他の分野の芸術とともに、その意味ではいよいよ問題解決のための出番到来といえるのではなかろうか。もちろん、音楽のみですべてことが解決するわけではないが、その重要な起爆剤となり得ることは確かであろう。いかなる形にせよ、より前向きにこの音楽というジャンルと取り組むことにより、単なるレジャー空間を埋めるための趣味の1つというだけではなく、もっと大きな個々人の精神的充足とか至福感と深く直結させ得るはずである。

 こうしたことを念頭に、強い興味と感動を共有しながら1つの音楽を体験することを目標に、その契機だけでも示したく、あらためて続100選を始めることにした。詩人の谷川俊太郎氏も述べておられるように、「言葉は音楽を語ることが出来ない」かもしれない。しかし、1つの音楽をめぐる諸々の出来事や、その音楽を体験する自分自身は語れるのではなかろうか。
 前シリーズでは 書き足らなかったことも多々あったし、新しい音楽ジャンルにも 精一杯挑戦してみたい。 続100選という以上、前回の基本的路線は踏襲するつもりだが、今回はデイスクの選定とか、内容についてもう少し筆者自身の自由な個人的裁量の幅も拡げてみたい。また、前回は、LPレコードのみに限定したが、今回は、デイスク100選と改題して、必ずしもLPに限定せず、例えば、CDとか映像でしか存在しない優れた演奏がある場合には、これらも積極的に取上げることにした。 単独の読み物としても 出来るだけ面白いものにしたいし、読者の中でたとえ1枚でも是非そのデイスクを聴いてみようかという事になれば、筆者として、これ以上の悦びはない。

平成17年11月吉日