White
White CEC LOGO HOME 製品 テクノロジー サービス 会社概要 コラム メール English White
White
タイトル

116
118

第117回 2010/07/01

「梅雨の最中で」

 九州地方の中、南部には集中豪雨をもたらしている今年の梅雨です。まだ大きい被害は出ていないようですが、この地域にお住まいの皆様にはご無事であられることをお祈り申し上げます。関東地方では、ここ1週間から10日間ほどは、曇天の連続で、空模様はまさに梅雨なのですが、おおむね翌日、当日といった極めて近い天気予報は外れることが多く、今年は意外と空梅雨かなと思わせるような日々が続いております。不安定な気象条件のもと、数多い気象予報士も頭を悩ましていることでしょう。皆様お住まいの地方ではいかがでしょうか。

 この梅雨は、皆様ご存知の通り稲作とは切り離せない性格の気象現象です(梅雨のない北海道には稲作の歴史がありません)。関東地方では一般的に5月初旬に田植えが行われ、6月中下旬からの梅雨で稲は大きく育っていきます。しとしとと一ヶ月以上にわたって、晩春から初夏にかけて雨が降り続く雨季を日本では梅雨といいますが、これはアジアモンスーン気候のもたらすものです。稲作を語るときに、いつも引合いに出されるのがこのアジアモンスーン気候です。

 気象関係者以外にはあまり意識されていませんが、モンスーンとは端的に行って季節風のこと。一定方向へと風がある地域で吹き続ける現象は、卓越風と呼ばれますが、それが季節的にほぼ同じような風向の変化を見せることを季節風=モンスーン(Monsoon)と呼んでいます。ですからモンスーンは全世界で起きる現象です。ただ、日本にも影響するこのモンスーンは、インドから東南アジアそして東アジアまでと影響を与える範囲が全世界でも最も広範囲に及ぶため、特にアジアモンスーンと呼ばれています。このアジアモンスーンは、日本の季節では春から夏にかけて南西の風を意味し、大洋上を通過してきますが、その風が多大な水分を含み、陸地部に長期にわたる雨をもたらすというしくみです。古来より稲作が可能であった東南アジア、東アジアは全てこのアジアモンスーンの影響下にある地域なのです。普通、うっとうしいと思われがちな梅雨ですが、これは季節風の影響で、何千年にも及ぶアジアの稲作と稲作文化を育んできたものなのです。

 まだ寒さの残る春先、突然の強烈な南風が吹きぬく一日を「春一番」と呼び、穏やかだった晩秋に冷たい北風が吹き荒れ、それを「木枯らし一号」と呼んできた日本。風の流れの変化に気候の変転の予兆を感じることこそ、アジアモンスーンの本質を感知した先人たちの知恵だったといえます。

参議院選挙とモンスーン 

 さて梅雨の最中、先の衆議院選挙で大勝した民主党政権下での初めての国政選挙、参議院選挙(第22回)が6月24日公示されました。今月11日の投票日に向けいまや選挙戦の真最中です。自民党政権の末期1,2年からこの参議院選挙の期間、私には理解できないマスメディアの動向があります。政権与党内部の関係者もかなり気を使っているといわれている、政党支持に関する世論調査の結果報道です。

 つい先日も、NHK総合第一放送で、民主党をはじめとする各党の支持率、新しく着任した菅内閣総理大臣に対する支持率などが、大々的に放送されました。また、日本を代表する、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞もそれぞれ独自に世論調査を行い、かなりの紙面を割いてそれぞれの結果を報道していました。意識調査の結果を、公的機関が独自調査によるものと銘打って大々的に報道する、この姿勢が理解できません。報道機関は、事実を独自の調査方法と独自の視点から理解し、それを大衆化するのが第一の役割のはずです。また、米国の報道機関がそうであるように、場合によっては自身の政治的立場を明確にして、支持すべき政治的立場を擁護し、また時として反対の政治的傾向に鋭く批判を加えることも必要でしょう。

 意識調査ほど簡単なことはありません。調査項目とその並べ方を決めさえすれば(ここに多くの疑問がありますが、今回はそれには触れません)、専門の取材スタッフは不要です。また、一般の事件や災害報道と異なり、報道した結果についてなんら責任を取る必要もありません。こんな簡単な、報道的な立場から見れば極めて安上がりで気楽な材料はありません。市井の殺人事件の報道よりはるかに簡便なのです。またそれを報道のトップに取り扱うなど、報道関係者のモラルにも関わるように思われるのです。残念ながら、辞任した鳩山前総理大臣も、自身と民主党に対する支持率の低下が辞任の契機であったと示唆する発言で政界から去りました。総理大臣職を自身で放棄する方は、当然政治世界から身を引くべき(これまでの自民党の政権担当者はみな政界にとどまり続けていますが)ですが、マスメディアの世論調査の結果を自身の方針の判断基準にすることには、なんとも情けない思いです(少なくとも氏を選出した多くの選挙民に対する責任の放棄ともいえるでしょう)。

 7月11日の結果が判明次第、恐らくその数日のうちに、新しい政界の絵模様に対する世論調査の結果がマスメディアから報道されることでしょう。少なくとも私には、そうした報道は、それぞれのマスメディアに属する取材スタッフの怠慢の証だとしか見えないのです。またもし、そうした意識調査の結果報道の大きさの如何が、マスメディア自身の意識だとすれば、自身の政治的立場をオブラートに包む欺瞞にさえ思えます。

 今月のうちには梅雨も明けることでしょう。気温も決して一本調子で上がるわけではなく、時として急に下がったりします。夏風邪と食べ物の安全性に注意され、猛暑にお備えください。








116
118