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第67回 2006/05/01

ゴールデンウィーク真只中に5月を迎えました。皆様いかがお過ごしでしょうか。関東地方では比較的好天に恵まれた連休のスタートでした。新入学、新入社された方々には、あっという間の一ヶ月だったのかもしれません。

この4月には、既に恒例となりました春の香港エレクトロニクスショーが、14日から4日間開催されました。この催しに参加する機会に、当社の製造委託工場があります上海にも立ち寄ってまいりました。

まず香港ですが、今回の開催日は、イースター休暇と重なってしまいました。比較的キリスト教徒の少ない日本ではなじみがあまりないのですが、キリスト教を旨とする国家とその国の人々にとっては、クリスマスよりもむしろ重要な日とされています。イエス・キリストが復活した日を祝う儀式のことをイースターつまり復活祭と呼びますが、毎年その日にちが異なります。辞書を引けば判ることですが、春分の日の後、最初の満月の次の日曜日と決められています。本年度はそれが4月16日で、イースター休暇とは、そのイースターを挟む前後数日間を指します。今回のエレクトロニクスショーは、まさにそのイースター休暇とまったく重なってしまい、このような長期休暇の場合には、多くの人々が長期旅行を楽しむため、当初から参加者が少なくなるのではないかと危惧されていました。

香港にそれほどキリスト教信者が多いとは思いませんが、長期に渡った英国の統治下で、イースターホリデイが習慣化してきていますから、信ずる宗教とは別に、自然とこの時期には多くの人々が香港を離れてしまいます。また、香港以外の国でもキリスト教国ではイースターホリデイなのですから、あまり日常的な勤務に勤しむことを潔しとはしないようです。会場を見てもやはり危惧したとおりで、残念ながら活発さには欠けた感が否めません。もし今回の日程設定が、イースター休暇を知らない、もしくは無視したい中国大陸側の何らかのプレッシャーによるものであるとすれば、営業的には残念なことに帰結したといえます。

ところで、最近日本のJRで採用され、次第に普及しつつある、自動運賃支払いカード、Suicaの原点が、ここ香港にあることを知らない日本の方が多いようです。Suicaとまったく同様の機能を持つのがオクトパス(OCTOPUS)・カードで、漢字では「八達通」と表記されます。少なくとも2000年には既に実用化されていましたが、日本のSuicaがJRと(JRの全てではありません)、JRの駅にあるキオスクの一部に使用が限定されているのに対して、オクトパスカードは、香港の主要な鉄道網、香港地下鉄(MTR)と九広鉄道(KCR)、また最近では新空港からのエアポート・エクスプレスの全てに完全に対応しているだけでなく、市内を縦横に走るバスや、九龍(カオルーン)と香港島を結ぶスター・フェリーにも使用が可能です。つまり香港の殆ど全ての公的な交通手段に使用が可能で、また大部分のコンビニエンス・ストアーもこれを受け付けています。(タクシーでの使用も検討されましたが、客からのチップとの関係でドライバー組織が強く反対、実現に至っていません)

残念ながら、日本のSuicaは、JRとJR関連小型簡易店舗にしか使用範囲の広がりがありませんが、香港とは比較にならない、日本の交通網と流通網の広さを考慮するとき、香港的利便性が日本で確保できた場合の市場の広がりは概算さえできない大きさになるのではないでしょうか。JRは最早日本国有鉄道ではなく、「民営化」された訳ですから、まず全ての民営JRで使用を可能とし、そして他の民営交通手段との交渉を重ね、それを徐々に広げていけばその利便性は次第に高まること請け合いですが、今のところそのような兆候を見ることができません。

他方で、香港ではこのオクトパスカードの実施のはるか以前から、使い捨ての紙切符を廃止しており、磁気テープを簡単なプラスティックカードに添付したものを使用していました(今でも併用されています)。プログラムの簡略化を図るためでしょう、プラステック切符での最終駅での不足分は徴収されることはなく、僅かでも残った金額があれば清算不要という利便性が付帯されていました。磁気テープの再記録化によりかなりの回数、再利用されています。日本では交通網が比較にならないほど広いため、清算不要機能を付帯することは不可能でしょうが、Suicaの多機能化が図れれば、今盛んに取り上げられている環境保全にも役立つことでしょう。膨大な紙切符を再処理するよりも、再処理する必要性の低いものを再利用した方が、はるかにコスト削減と、無駄な作業を除去することにもなります。

さて、例年になく寒い上海でした。ここ数年日本の大手メーカーの生産拠点が増えてきており、それに伴い日本の技術者を中心とした人々の居住が増えてきているせいでしょう、日本料理店、日本語を掲げたカラオケ店が、新規開発地区である浦東地区だけでなく、伝統的な旧市街地にも多く見られるようになっています。

日本を中心とした海外資本の集中的な投資によって、今一番の懸念事項は電力の不足です。既に、パソコンを中心とした、弱電製品の生産拠点が集中している広東省東莞地区では既に2、3年前から電力(と水)が慢性的不足状態となっており、この地区の工場の多くは自己防衛のため火力(重油)発電設備を備えています。しかし乗用車、一般車両などのより大きな電力を必要とする産業の集まる上海での電力不足は、各工場の自主的な防衛策では対応しきれるようには思えません。

4月30日に中国初めての商業用原子力発電所、泰山一、二号炉(浙江省期嘉興)が完成したと報じられました。65万キロワットの電力供給が可能とされてはいますが、公称されたとおりの電力が供給されたとしても、需要がピークとなる夏場には、まだまだとても十分とはいえないようです。中国政府と、上海市当局がこれを座視するとは考えられませんが、右肩上がりに成長を続ける中国の産業界のアキレス腱のひとつがここにあるように思われます。

さて、日一日と緑の濃さが増していく季節です。戸外へと出かけられる方もさぞ多いことでしょう。気温の上昇に伴い、交通の渋滞がより深刻になることもあるかもしれません。十分交通事故にはお気をつけてお過ごし下さい。