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ホーム/コラム/徒然野鳥記/第33回セッカ


第33回 2004/8/01
セッカ
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(31)セッカ「スズメ目ウグイス科」
    英名:Fan-tailed Warbler
    学名:Cisticola juncidis
    漢字表記:雪加
    大きさ:12.5cm

7月24日(土)、25日(日)と炎天の下、いつもの野鳥観察場所、見沼田圃に出かけました。春先あれほど鳴いていたヒバリ、ホオジロもこの猛暑に辟易したのかひっそりとしています。カッコーもその托卵相手のオオヨシキリもはるかかなたの南方へ飛び去ってしまったかのようです。唯一、活発に飛び回っていたのがツバメ、そして高らかに鳴いていたのがセッカでした。ツバメの舞い飛ぶ中、セッカの声が真夏日をものともしないかのようです。

夏の鳥、セッカの話です。農耕地、河川、水路周辺の、ススキ、オギ、ヨシ、チガヤなどの草原に普通に生息する留鳥または、北部日本では漂鳥。スズメより小さく、草むらの上をせわしなく飛びながら独特の声で鳴きます。空へ上っていくときは、「ヒンヒンヒン」、もしくは「ヒッ、ヒッ、ヒッ」と声高に鳴き、下降するときには、「チャツ、チャツ、チャツ」とも「ジャッ、ジャッ、ジャッ」とも聞こえる、まったく別の声で鳴きます。姿を見ないと別々の2種類の鳥がいるかのような錯覚を覚えるほどです。上昇時の声が、短めの場合には「縄張り宣言」であり、長めのときには「求愛の囀り」であるとも分析されています。

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鳴きながら舞い上がるときの軌跡がまた独特。一直線にではなく、ある地点まで行くと、ちょっと下がりまた上ることを繰り返しますので、あたかも空中でスキップしているかのようです。また下降するときはジグザクに、見えない追跡者を撹乱させるかのように飛び、草むらなどに入り込むときの動作も実にすばやく、観察はあまり容易ではありません。ですからかなりの個体数がいるにもかかわらず、無意識に通り過ぎる人々の目に触れることも少なく、注目されることがあまりないようです。

細い嘴、白い腹部、ピンク色の脚、白い眉班が特徴です。よく見ますと頭頂部は黒く、明るい褐色の羽には黒褐色の縦斑があります。同じような条件の場所に住むホオジロより一回り小さく、腹部が白いので容易に区別できます。クモや小型の昆虫などを捕食します。この鳥はまた一夫多妻であることでも有名です。一羽のオスに対して、メス6羽程度のバランスとなっているようです。ただオスはメスへの求愛条件として、クモの糸で紡いだイネ科の植物の葉で作った壷状の巣を気に入ってもらわなければならないようで、なかなか容易ではないことが推測されます。この巣作りの基礎工事はオスが、それを気に入ったメスがその巣の内部にチガヤの穂などを敷き詰め完成させるようです。

さいたま市見沼田圃の一地区にもセッカが集中して住んでいる場所があったのですが、数年前に有料道路、架橋工事のため、その場所では全滅してしまい、数年にわたった、求愛、営巣活動の観察を中断せざるを得なかったことがあり、残念な思いをしたものです。

セッカは夏の季語です。

 

草の山歩きやすけれ雪加鳴く   岡井省二
雪加鳴く軒深くして御師の宿   いさ桜子
雪加鳴き一人の田植はかどらず  高山光男
雪加には早し雪加に逢ひなし   後藤綾子

「ヒン、ヒン、ヒン」と鳴く声を耳にしたらよく空中を見回してください。きっとセッカの空中スキップを見つけることができるはずです。 下は、たまたま見かけた冬のセッカです。

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注:写真は、画面上をクリックすると拡大できます。