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第126回 2011/04/04

「東日本大震災」

 4月に入りました。3月11日(金曜日)の大震災以降、日本全国を精神的な暗雲が覆い続ける一方、自然の時の流れは、瞬時も休まず、関東地方では桜が咲き始め、濃いオレンジ色のレンギョウが道路脇を飾り、ちょっと郊外に出ると菜の花(セイヨウカラシナ)の薄い黄色の絨毯の中に、ショカツサイの青紫色が明るい日差しと温かみを増してきた風に揺らいでいます。千年に一度といわれる大震災(東日本大震災と正式に決まりましたが)を経験した私たちは、その経験を風化させることなく、震災以降の人々に何かを伝えていく必要があることを強く感じる春の入り口です。

 まず何よりも、この大震災で被災され一命を落とされた数多くの方々のご冥福をお祈り申し上げます。今なお避難場所での不便さと寒さに耐えている被災者の多くの皆様方に心からお見舞い申し上げます。既に大震災から3週間以上を経た今日でも、インターネット上の動画配信で、3月11日の津波が沿岸の港湾と周辺の町に押し寄せる、爆発的なエネルギーとその破壊力を目の当たりにする時、発する言葉を失ってしまいます。

 1960年5月、チリ沖地震によって起きた津波は、北海道、東北(岩手県、宮城県)を襲い、国内での被災死亡者は142名に上りました。その反省から、多くの東北太平洋岸では津波対策としての防波堤が建設されました。そして昨年2月28日、同じくチリ沖を震源とする地震による津波の際には、幸いにも国内の死傷者を数えることなく、大きな被害も報告されることなく終息しました。

 残念ながら、昨年の津波に対する防災対策の成功が今回は役にたたず、津波は「巨大堤防」を乗り越え町並みをなぎ倒し、堤防内部の人々を車両や建物ごと飲み込みました(津波の最大規模の地点では30mを越えたと報告されています)。昨年2010年2月の経験が、油断を呼んだ側面があったのかもしれません。そして今回の津波は、福島県の原子力発電所をも巻き込み、ついに放射能による汚染が、地震と津波の深刻な後遺症として今なお緊急に解決すべき課題として報道され続けています。

 今回の大震災を複雑化させているのは、驚異的な自然の猛威に晒され、甚大な被害にあった方々を救済することが急務な自然災害対策という側面だけにとどまらないことにあります。、その自然災害が、原子力発電所の機能不全にとどまらない放射能汚染の深刻な危機を招来し、全くの人災を連鎖反応として帰結していることです。福島第一原発の設立時に遡っての設計的、技術的な問題点の指摘も公のものとなってきました。1950年代、原子力開発導入に先鞭をつけた当時の為政者、巨大プレスのリーダー、そして一部の原子力研究者によって宣伝された、「原子力開発の絶対的な安全性」の宣伝が、実は、まだまだ検討と改善すべき余地を残した不完全なものであったことが最終的に露呈してしまいました。

 現在原子力発電は、日本の電力の3割を占めるに至っています。今回福島第一原発を擁した東京電力は、電力の23%を、関西電力は何と48%、次いで九州電力は41%をそして北海電力は40%を原子力発電に頼っています。直ちに原子力発電を中止することは、現在の日本の世界における産業的な位置をまったく損ない、人々の生活水準の大幅な劣化を覚悟しない限り、もはや検討すら不可能な電力源構成の状態です。世界で見た場合、日本の原子力発電設備の規模は、アメリカ、フランスに次いで第三位といわれています。今回の福島第一原発の事故に対する対応に、アメリカ、フランス両国が熱心なのは無理からぬことです。人災をいかに人智を持って克服できるかのテーマは、国内では今回の被災地、東北・関東にとどまらず、原発依存度の高い関西、四国、九州そして北海道の課題でもあります。また、世界的には、原発を促進して来た、アメリカ、フランス、韓国の問題でもあるのです。天災に対する備えの完全さを、もう一度厳しい目で国内原子力発電所のすべてに見直しのフィルターをかけることがまず必要でしょう。

 日本の電力は、糸魚川・富士川を挟んで東が50Hz、西が60Hzと区分されています。東海道新幹線は基本的には60Hzで運行され、東京電力管轄区間では東電の50Hzをサイクル変換して運用されています。今回の震災に際しても、中部電力以西の電力は、周波数転換しないと東京電力以東の圏内では使用できません。その変換・供給能力には限度があります。この周波数転換の変圧所の能力をあげる作業は既に進められているようですが、やはり限界があります。全国一律の周波数統一の動きを今こそ模索し始める時期ではないかと思われます。ましては蓄電できない交流電源を一国内で二分している「先進国」日本は、地震大国でもあります。災害に際して電力供給の計画性を自ら放棄しているようにも見えるのです。

 古く明治時代に遡る大阪電力の60Hz(アメリカGEの発電機を使用)、東京電力の50Hz(ドイツAEGの発電機を使用)という不揃いを、非合理性を、第二次世界戦争後の戦後復興期にも解決できずに今日に至っています。千年に一度の大天災に際して、電力の効果的な運用を根本から見直すうえで、電源周波数の統一は是非必要なことではないかと思われてなりません。 

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 上は、ドイツ気象庁が4月4日に公表している「福島第一原発から出た放射性物質の拡散分布予測図です。これは日本の気象庁のデーターを基に作成されたもので、4月5日現在、我が国政府は一切発表していません。今回の原発事故という人災は、過去の絶対安全神話を創作した為政者たちのキャンペーンへの反省として、素直にその被害の程度を公表すること、そうして今なお稼働している残った原発の問題点の有無を厳しく点検することが必要です。無謬神話は崩壊しましたが、危険性を内包しているであろう残った原発は当面必要なのですから。

 その上でより効率的な電力供給の確保には、直ちに企業活動を著しく阻害する「計画停電」を止めて、それにかわる計画的な電源供給システムを公表すべき時でもあります。そして将来的には、全国的な電源供給の計画的な管理ができるように、そして不足の事態に備えるためにも、周波数統一の組織的な検討に入るべき時期に来ているように思われてなりません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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