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第131回 2011/09/06

「大震災から半年を経て」

 あまりにもゆっくりとした台風12号の接近で、関東地方は曇り空のもと9月に入りました。その後、台風は速度を速めることなく北上を続け、3日、四国に上陸し同日夜半中国地方に到達、9月4日早朝日本海に抜けました。この間、四国、紀伊半島の雨量は記録的なものにのぼり、同地域を含む東日本各地にさまざまな被害をもたらしました。関東地方では、9月6日になって、今月初めての晴れ晴れとした朝となり、すでにそよ吹く風には秋の気配が濃厚に感じられます。この間被災された皆様方には、心からお見舞い申し上げます。ただ、台風13号の北上で、今回は北海道地方の水害が懸念されております。その地域の皆様、どうか十分お気を付けください。

 3月11日の東日本大震災から、今月で半年が経とうとしています。秋風を感じる今日ですが、今なお東京電力のホームページでは、「計画停電」の項目と、「節電」の勧めが掲載されています。半年を経て振り返ってみると、大震災によって電力供給が確保できないという理由で「計画停電」が実施されましたが、果たして本当に必要な措置であったのかという疑問はますます強まってきています。インターネットのサイト上では、様々な意見が載せられていますが、計画停電実施中の実態電力需要と供給能力が明らかにされていない以上、不要な措置であった、もしくは何らかの別の意図をもった措置であったという懸念を拭い去ることはできないでしょう。計画停電の実施により、市民生活が不便をかこった以上に、少なからざる企業活動が制約を受けた事実(中には倒産に至った事例もあります)は決して軽視すべきではないはずです。

ファイル:2011 Japanese power saving poster 01.jpg

 計画停電の延長上に、夏を前にした節電のキャンペーンがマスメディアによって報道され、政府担当機関も自身のホームページでそれを促進してきました。少なくとも東電管轄内の地域で、実際に電力供給を停止された経験を持つ地域では、無条件で「節電」の政策に従わざるを得ません。電力供給のない状態を長時間経験した不便さは、いかなるキャンペーンにも勝ります。

 不必要な無駄を省き、合理的な必要性だけを確保する、節約。倫理的にも反論の必要がありません。日本人固有の「もったいない」意識を云々する必要はありません。電力を節約するという国民的なキャンペーンには、電力が絶対的に必要であるという前提の上で、不要な目的での電力消費を控えるという自主的な行動を依頼するものでした。誰に対してか。一般国民の日常生活での電力消費活動に対してです。東京電力は、そのためのガイドもホームページで紹介しています。

 ここでも疑問が残ります。電力会社は、誰がどれくらいの電力を消費してきたかのデータを当然持っているはずです。経済活動を見るとき、製造業、販売業、通信・サービス業と一般的には分けて考えることができます。電力消費での、全体像における国民の家庭生活での消費割合を公表すべきでした。

 電力消費、つまり電気使用量全体の過去のデーター、家庭での電気使用量の細目は、電気事業連合会からも発表されています。また、2010年のエネルギー白書によりますと、2008年度の消費内訳は、産業部門42.6%、運輸部門23.6%、そして民生部門が33.8%となっています。この白書でいう民生部門が、一般家庭や個人商店的な商業部門での消費を指すとすれば、電力消費全体の3割強です。7割を占める部門での対応策をまず積極的に考慮することが、実際上電力消費を下降させる得策であることは明らかです。いささか古いデーターではあっても、この間一般家庭での電力消費が飛躍的に上昇したとは考えられません。

 関係政策機関は、一般的な家庭での節電方策をキャンペーンする以前に、政策決定に必要な資料を東京電力に開示させた上で、製造、運輸通信、サービス業に対する具体的な政策を明確に打ち出し、必要であれば法令化を図るべきでした。「お願いする」どころではなかったはずです。過去の電力消費の概要を提示したうえで、最大効果の上がる部門での消費削減政策を打ち出す。そしてなお必要であれば、最後に国民の家庭での電力消費の節約を依頼すべきだったと思われてなりません。この点での不十分さが、もともと節電は必要だったのか、原発再開のための政策的キャンペーンではないのかといった疑問を後々呼び起こしています。

 私はもともと地球温暖化によるエコロジー政策の採用といった、一見合理的で論理的でありながら、実は短絡的で根拠の疑わしい、全地球規模的な煽動的言辞には懐疑的です。大天災が「絶対安全なクリーンエネルギー」のもとに潜む大変な危険性を白日のもとにさらしてしまいました。8月下旬に大震災当時の政権担当内閣が辞任し、9月に入り新内閣の組閣が発表されました。震災当時の内閣は、まず福島第一原子力発電所の次々と起こった水素爆発による人体へ及ぼす被害が尋常ならざるものであったことを公表せず、結果として原発近隣の人々の放射能被爆を招いてしまいました。その後、炉心部がメルトダウンしていたことが公表されたわけですから、これは水素爆発ではなく核爆発だったと訂正すべき事態だったといえます。新内閣と政府は、今こそこれ以上の情報操作をやめ、必要な情報は的確に公表することが求められているのではないでしょうか。

 

 




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