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第133回 2011/11/08

「オーディオショウでの2枚のCD」

 2011年は早くも11月に入りました。10月下旬には、木枯し1号も吹き、今日は立冬。立冬から立春までが冬。秋も去り、冬の始まりとともに、2011年も残り2ケ月を切りました。今朝ほどの気象情報では、北海道の一部都市では初雪も予測されていました。関東地方では、比較的穏やかな冬の始まりですが、皆様お住まいの地域ではいかがでしょうか。

 先週末までの3日間(11月3日〜5日)、東京有楽町の国際フォーラムで、恒例の東京インターナショナルオーディオショウが開催されました。当社もこれで6年目の参加となり、現行製品と、来春発売予定の新製品をご紹介させていただきました。この3日間にわざわざ当社ブースまで足をお運びいただきました皆様には、心から御礼申し上げます。当社のブースの様子、講演を依頼しました、傳信幸、藤岡誠の両先生の講演中の様子は、こちらでご覧いただけます。

 当社では、ハイエンドオーディオ製品としてご紹介できるスピーカーシステムがありませんので、昨年に続き他様のスピーカーをお借りして、当社製品をご試聴いただきました。フューレンコーディネート様が輸入販売されているスイスのPIEGA(TC70X)、エソテリック様が輸入販売されている英国のTANNOY(DC−10T)を使用いたしました。 快く貸与いただきました両社様には、厚く御礼申し上げます。

 長年、試聴を含めたユーザー様への製品紹介の催しものでは、どのようなディスクを使用するかには、いつも気を使うところです。皆様の音楽の嗜好性は多様ですから、ごく大雑把にクラシック、ポピューラーそしてジャズの分野から、比較的新しくリリーズされたものから選択します。ただ、音楽は最初のわずかな演奏部分だけでは、評価できないものが多く、とりわけクラシック音楽の分野では、広く知られた曲目以外では、興味の薄い方には馴染みがないものが多く、選択には悩まされます。今回のショウに当たって選び、会場で改めて聞いてみて、お勧めできる2枚のCDがありましたのでご紹介します。

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 最初の一枚は、金子三勇士演奏の、Miyuji PLAYS LISZT [Hybird SACD](販売元 ミューズエンターテインメント2010年10月リリース)。今回の東京インターナショナルオーディオショウの実行委員会が、来場の皆様向けに企画した演奏会が、この金子三勇士のピアノ演奏だったことから、初めて聴いてみました。当社のCDプレーヤー、CDトランスポートはSACD再生はできませんが、音場感には何の違和感もありません。

 聴いてみて音楽的な表現力の力強さと若々しさにまず吃驚させられます。私は時々、フジコ・ヘミングの情緒感あふれるラ・カンパネラを聴くのですが、同じ曲とは思えないほどの金子三勇士の音楽世界が広がります。左右の指使いが、全く独自に組み合わされ、演奏技術の完成度の高さをすぐに感じることができます。まるで連弾演奏を聴いているかのようでいて、音楽的な統一性が若々しい力強さで表現されています。これほどのピアノ奏者を知らずにいたことが恥ずかしくさえ感じられるのです。

 金子三勇士のオフィシャルサイトは、http://miyuji.jp/。Miyuji Plays Liszt はソニーミュージックショップでは、、http://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&cd=MECO000001003 。

 次の一枚は、1956年にドイツで演奏、ライブ録音された音源(ドイツ放送アーカイブ 76cm/sec テープ)を、50年以上を経て本年(2011年)初めて本格的にCD化された、ドリームライフ販売のクナッパーツブッシュ・イン・ドレスデン(DLCA-7030)。ブラームス、交響曲第3番とシューマン交響曲第4番が収められています。戦前、戦中そして戦後のドイツで指揮者として第一線で活躍し、終生欧州から出ることを嫌ったといわれる、名指揮者ハンス・クナッパーブッシュ(1888年- 1965年)は、本番前の練習や、スタジオ録音も嫌ったといわれていますので、ライブ録音された自分の表現する音楽が、デジタル的に高性能化され新しい息吹で復活したことに喜んでいるかもしれません。

 実は、このCDを知ったのは、音楽評論家の谷口静司氏(札幌在住)のブログ、クラシック新譜、演奏会、甘口評論によってです。谷口氏のこのディスクへの評論をそのまま引用しましょう。

 「鮮明で歪み少くSN比良好。構えの大きい演奏。万事倭小化してしまった今日まず聴くことが出来ない気宇壮大な指揮。演奏前後のざわめき、チューニングの響き、指揮者が足を踏み鳴らす音、つぶやき等々、大変大変臨場感がある。掘出物です。」

 戦後生まれの私には、クラシック音楽の戦中から戦後初期の音楽表現を経験上知りえませんが、1956年のこの演奏を聴くと、実に厳正、厳粛さをまず感じます。ブラームスは、またはシューマンはこのように表現されなければならないという、明確なメッセージを受け取っているようにさえ感じられるのです。現在のように高精度集音マイクを分散させる方法ではなく、ピンポイント収録型の録音表現は、私には心地よく聞こえますし、演奏会場の息遣いがデジタル処理によって高精度に再表現されることは素晴らしいことに思われます。あらためて、ご紹介された谷口氏の知見の広さに驚き、また深く感謝いたします。

 また、こうして50年以上も前に録音された音源が、最新のデジタル技術によって生まれ変わる可能性を目の当たりにしますと、CDの可能性にはまだ将来性があることを実感します。EP/LPレコードから、CDへ、そして今日インターネット配信の急速な増加と、再生音楽の主流となる音源の変化には目まぐるしいものがあります。再生音楽装置の設計、製造に携わる私どもとしては、この大きな流れには、なす術を知りません。ただ、再生音楽の目指すものは、音楽というヒトの芸術的な感性をできるだけ深い感動とともに、場所と時間の制約を受けることなく、それも高精度に楽しむことができるように尽力することだと考えております。


 

 




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